腫れぼったい目

はじめに

眼瞼下垂とは上まぶたを瞳孔の上までしか上げられず、正面視(顔を正面にむけて目をまっすぐ向いた状態)で瞼縁が瞳孔にかかった状態をいいます。眼瞼下垂には先天性眼瞼下垂、後天性眼瞼下垂、偽眼瞼下垂があります。原因・その下垂の程度によって治療法が異なります。特に多いのは後天性眼瞼下垂で、その中でも“腱膜性眼瞼下垂”が最も多いと言われています。それぞれの眼瞼下垂とその手術法について解説します。

眼瞼下垂の種類

◆後天性眼瞼下垂

全眼瞼下垂の中で最も多いのが後天性眼瞼下垂です。後天性とは後から症状がでてくるもので、もともとは上まぶたを正常に上げることができたのに、徐々にあるいは急に下がってきた状態です。特に腱膜性眼瞼下垂は、上眼瞼挙筋(目をあげる筋肉)が瞼板に付着する部分の腱膜(挙筋腱膜)がゆるむことで起き、最も頻度が高いです。その原因として加齢によるもの、ハードコンタクトレンズの長期使用、白内障・緑内障・硝子体手術を行った既往のある方に多いとされています。

◆先天性眼瞼下垂

約80%が片側性で、先天的に上眼瞼挙筋の発達異常や、筋肉を支配する神経に異常をきたしている場合が多いです。生後より上まぶたが下がっているので診断できます。まれに弱視や斜視の原因になりますが、弱視や斜視の傾向があればすぐに手術が必要になりますが、それ意外は経過観察でよいでしょう(適切な手術時期は医師と相談して決めましょう)。

◆偽性眼瞼下垂

一見眼瞼下垂のように見えてしまい、“みかけの眼瞼下垂”とも言われています。特に眼瞼痙攣による眼瞼下垂は、診断を誤り眼瞼下垂の手術を行っても、改善しないことから注意が必要です。

眼瞼下垂の判定

眼瞼下垂は、挙筋機能検査(levator function)、瞼縁角膜反射距離(MRD)、そして瞼裂高の3種類の検査で判定します。

◆挙筋機能検査;levator function

挙筋機能検査

眼瞼挙筋機能の低下の程度を調べる検査です。下記の手順で測定し判定します。

  • ①額の筋肉を使って上まぶたをあげないように、眉毛の上を親指でおさえる。
  • ②その状態で最大下方視から最大上方視までの移動距離を測定する。
  • ③移動距離が上眼瞼挙筋の挙上機能をあらわす。

通常約10~15mmが正常。5~9mmが軽度眼瞼下垂、4mm以下が重度眼瞼下垂と判定できます。

※腱膜性眼瞼下垂は、腱膜付着部が少しずれただけで、上眼瞼挙筋の挙上機能は問題ありません。

※上機能が低下していれば、筋肉あるいはそれを動かす神経に問題があると判定できます。

※突然上まぶたが下がるような場合は、脳梗塞・脳動脈瘤・糖尿病などによる動眼神経麻痺などが疑われますので、CTやMRI検査や血液検査が必要になります。

※日内変動(朝は目が開きやすいのに、夕方になると開かなくなる)が大きい場合は、重症筋無力症が考えられ血液検査が必要になります。

◆Margin Reflex Distance(MRD);瞼縁角膜反射距離

Margin Reflex Distance(MRD);瞼縁角膜反射距離

MRDは黒目の中心(角膜反射)から上眼瞼縁までの距離のことで、目の開き具合、左右差を判定します。

  • ①医師と患者の間に約50cmの距離をとる。
  • ②ペンライトをあて、角膜反射から上眼瞼縁までの距離を測る。

通常約3.5~5.5mmが正常、約1.5~2mmで軽度眼瞼下垂、0.5mm以下は重度眼瞼下垂と判定できます。

※角膜反射から下眼瞼縁までの位置をはかることで、上下左右の眼瞼の相対的位置関係を判定できます。

◆瞼裂高

Margin Reflex Distance(MRD);瞼縁角膜反射距離

正面視で睫毛から黒目の下までの距離を測定し、黒目の見え方で下垂の程度を判定します。 通常約10mm以上が正常、約6~7mmで軽度眼瞼下垂、5mm以下は重度眼瞼下垂と判定できます。

眼瞼下垂の症状

上眼瞼挙筋の挙上機能が低下すると、まぶたを上げることが難しく、無意識のうちにおでこの筋肉(前頭筋)を使って、上まぶたを上げる補助を行うようになります。

  • ①眉毛の位置が上がる
  • ②おでこにしわがよる
  • ③アゴをあげて見るようになる
  • ④頭痛、肩こり、眼精疲労が生じることがある

※上眼瞼挙筋の挙筋腱膜は二重まぶたをつくる腱膜でもあり、眼瞼下垂が生じれば、通常の位置からずれることで二重の幅が広くなったり、場合によっては三重まぶたになる場合があります。

治療方法

挙筋腱膜前転法

挙筋腱膜前転術の解剖イラスト

挙筋腱膜前転術の解剖画像

下段は目の解剖です。挙筋腱膜の下にミュラー筋があり、上方には眼窩脂肪を認めます(サンケンアイでは眼窩脂肪の除去は禁忌)。挙筋腱膜は先端は薄く徐々に分厚くなります(*)。 (*)挙筋腱膜と瞼板とを糸で縫着する時(前転時)の重要なポイントになります。画像をみてもわかるように、出血を出来るだけ抑えることで、術野が綺麗に見えますし、術後の腫れを予防できます。

手術は局所麻酔で行います。皮膚切開(皮膚のたるみがある場合は皮膚を切除します)を行い瞼板から挙筋腱膜を剥離し、続いて挙筋腱膜とミュラー筋の間を剥離します。挙筋腱膜だけを前転して瞼板に糸で再固定します(ナイロン糸は体内に残しておいても問題ありません)。最後に皮膚をナイロン糸で縫合します。抜糸は5日目でおこないます。

  • 目の手術の後に気をつけることは血液循環がよくなること(入浴・飲酒・激しい運動など)は2~3日は避けて下さい。コンタクトレンズの使用ですが術後最低2週間避けて下さい(ハードコンタクトレンズの長期使用は眼瞼下垂の原因になる可能性があるのですすめません)。お化粧は抜糸後から可能です。

症例写真

①挙筋腱膜前転術
施術前 施術後3ヵ月

BEFORE

AFTER :施術後3ヶ月

目がほとんど開いていません。二重のラインは内側が幅広くなっていて、左右差も認めます。挙筋腱膜前転術を行いました。まぶたが開くようになりました。瞼縁は瞳孔にかかっていません。また二重のラインがきれいに整っています

②挙筋腱膜前転術+皮膚切除
施術前 施術後

BEFORE

AFTER :施術後1ヶ月

皮膚にたるみと挙筋機能が低下しています。挙筋腱膜前転術+皮膚切除を行いました。まぶたが開くようになりました。また瞼縁は瞳孔にかかっていません。

③挙筋腱膜前転術(サンケンアイ症例)
施術前 施術後

BEFORE

AFTER :施術後2ヶ月

サンケンアイ(目の上が凹んでいます)の状態です。また目が開きにくくなっていました。挙筋腱膜前転法を行いました。サンケンアイと目が開くようになりました。また二重のラインがきれいに整いました。

④挙筋腱膜前転術(左右差のある右眼サンケンアイの症例)
施術前 施術後

BEFORE:通常の状態

目を閉じた状態

右目の挙筋機能が低下し、瞼縁が瞳孔にかかっています。また左右共に目の上の凹み(サンケンアイ;sunken eyes)があり、特に右目が顕著だったため、右目のみ挙筋腱膜前転術を行いました。

症例 症例2 症例

BEFORE

AFTER :施術後1週間

AFTER :施術後1ヵ月

手術後の経過を確認すると、術後1週間では内出血を認めますが、まぶたの開きは良くなり、瞼縁は瞳孔にかかっていません。目の上の凹みの改善もみられます。術後1ヶ月後では内出血や腫れもおさまり、自然な仕上がりになりました。

施術前 施術後

BEFORE:通常の状態

AFTER :施術後1ヶ月

⑤  眼瞼下垂を伴うサンケンアイの治療

BEFORE

BEFORE :最大に開けた状態

眼瞼下垂を伴うサンケンアイの症例です。目の上の凹み(サンケンアイ)の症状により、年齢よりも老けて診られるということでした。所見として、目の上の凹み(サンケンアイ)、重瞼ラインが広い、また目を大きく開いてもらっても殆ど通常の状態と変わりません。これは眼瞼下垂の状態です。手術は局所麻酔下にて挙筋腱膜前転術を行います。

BEFORE :デザイン(開眼)

BEFORE :デザイン(閉眼)

デザインです。瞼縁から約6mmにデザインします。このようなサンケンアイの症例では皮膚を切除しません。目が開きにくい原因が皮膚のたるみではないためです。

BEFORE

AFTER :施術後1ヵ月

施術後1ヶ月では重瞼ラインが下がり、目の開きが良くなっています。また目の上の凹み(サンケンアイ)が改善しています。 かなり若返った印象です。

BEFORE

AFTER :施術後1ヵ月

術後1ヶ月の傷ですが重瞼ラインとして落ちています。時間の経過とともにさらに目立たなくなるでしょう。

BEFORE :最大に開けた状態

AFTER :施術後1ヶ月(最大に開けた状態)

眼瞼下垂によって開きにくかったため、術前では前頭筋を使って(眉毛の挙上とおでこのしわ)目を開けていましたが、これらも改善されています。

※before&afterの画像は参考画像であり、症例により効果や満足度は異なりますのでご了承下さい。

よくあるご質問(当院・丸山医師の回答)

眼瞼下垂に再発の可能性はありますか?

まれに再発の可能性はあります。また上まぶたの皮膚が加齢によりたるんでくるので、挙筋機能は正常でも、そのたるんだ皮膚によってまぶたを上げにくくなり視野が狭くなります。このような場合はたるんだ皮膚を除去するだけで改善されます。

白内障手術の後に眼瞼下垂が生じることはありますか?

最近その関連性が注目されています。白内障・緑内障・硝子体など各手術を行ったあとに、眼瞼下垂が生じたと報告されています。中でも手術時の開瞼器による挙筋腱膜の伸展や菲薄化、また一部瞼板からの離断など、開瞼器を用いて大きく開瞼を行うような機械的刺激が原因ではないかと報告されています。

リスク・副作用・合併症について

内出血、腫脹、左右差、後戻り、浅い重瞼線、深い重瞼線、不整な重瞼線(予定外重瞼線)、目が開きすぎる、角膜炎、ドライアイ、目の開きが悪い、瘢痕形成(傷跡が残る可能性があります)、頭痛、目の奥の痛み、自分が想像していた結果と異なるなどが考えられます。

価格(税込み)

挙筋腱膜前転術 ¥486,000(両側)

前頭筋吊り上げ術

適応

挙筋機能がなく、挙筋腱膜前転術、挙筋短縮術、挙筋腱膜タッキングなどの眼瞼下垂手術で改善が見込めない場合に適応があります。

※挙筋機能は、顔を正面に向け顔を動かさずに、最大で下を見た時と、最大で上を見た時の瞼縁(まつ毛付着部あたり)の移動距離で測定し正常は約15mmです。

方法

手術は局所麻酔で行います。挙筋機能がなく、上まぶたを自力であげることができないために、前頭筋の収縮によって上まぶたを挙上できるように、前頭筋と上まぶたの瞼板を吊り上げ材料(大腿筋膜やゴアテックス)で固定します。眉毛の上に2箇所、瞼縁から上2mmに2箇所の合計4箇所を切開し、それぞれを皮下トンネルでつなげます。その中に吊り上げ材料を通します。吊り上げ材料に筋膜を使用する場合は、利き足でない方の大腿から筋膜を採取します(日常生活等に差し支えることはありません)。大腿外側を2箇所(それぞれ3cmづつ)切開し筋膜を採取します。
採取した筋膜を細工し吊り上げの材料として使用します。ゴアテックスは人工物ですので採取する必要はなく、そのまま吊り上げ材料として使用します。 いずれも抜糸は5~7日目でおこないます。大腿から筋膜を採取した場合は、採取部の安静が必要になり、術後1ヶ月は大腿部を圧迫するサポーターが必要になります。

※目の手術の後に気をつけることは血液循環がよくなること(入浴・飲酒・激しい運動など)は2~3日は避けて下さい。コンタクトレンズの使用ですが術後最低2週間避けて下さい(ハードコンタクトレンズの長期使用は眼瞼下垂の原因になる可能性があるのですすめません)。お化粧は抜糸後から可能です。

よくあるご質問(当院・丸山医師の回答)

大腿筋膜とゴアテックスだとどちらが吊り上げ素材として有用ですか?

やはり自分の組織である大腿筋膜がおすすめです。しかし、筋膜を採取する必要があり大腿部に傷ができます。一方でゴアテックスは、非常にやわらかく通気性と保温性に優れているためにスキーウエアーなどに用いられている繊維です。医療用には人工血管や脳硬膜の修復に用いられています。美容外科の分野では被膜(カプセル)ができないために特に海外で普及しています。長期経過でも石灰化や輪郭が浮き出てくることは非常にまれです。周辺組織と癒着するために自家組織同様に取り出しにくい可能性があります。鼻根部や眉間部の隆鼻にも用いられています。

リスク・副作用・合併症について

■ゴアテックスによる吊り上げ術

内出血、腫脹、左右差、感染、後戻り、浅い重瞼線、深い重瞼線、不整な重瞼線(予定外重瞼線)、目が開きすぎる、角膜炎、ドライアイ、目の開きが悪い、瘢痕形成(傷跡が残る可能性があります)、頭痛、目の奥の痛み、自分が想像していた結果と異なるなどが考えられます。

■大腿筋膜による吊り上げ術

内出血、腫脹、左右差、感染、後戻り、浅い重瞼線、深い重瞼線、不整な重瞼線(予定外重瞼線)、目が開きすぎる、角膜炎、ドライアイ、目の開きが悪い、瘢痕形成(傷跡が残る可能性があります)、頭痛、目の奥の痛み、自分が想像していた結果と異なるなどが考えられます。
また筋膜採取部は、内出血、腫脹、感染、感覚鈍磨、疼痛、採取部の凹凸、傷のし開(しかい;傷が開く)、糸が出てくる(埋没縫合した糸がでてくることがある)、縫合糸膿瘍、テープ(傷の安静をはかるためのテープ固定)かぶれ、傷の肥厚・陥凹、瘢痕形成(傷跡が残る可能性があります)などが考えられます。

価格(税込み)

ゴアテックスによる吊り上げ術 ¥540,000(両側)
大腿筋膜による吊り上げ術 ¥756,000(両側)